dot2 は、トラッキング卓です。
これについてあまり気にする必要はありませんが、詳細を知っておくに越したことはありません。
これはどのように動作するのでしょうか。
基本的にトラッキングとは、明示的に指示されていないときにフィクスチャが行うことと言えます。値の変更を例にあげると、キュー1でフィクスチャを50%にした場合、他のキューで何らかの指示を与えない限り、すべての後続キューで値は50%のままになります。
下の表を見てください。
キュー番号 | フィクスチャ1 Dim |
---|---|
1 | 50 |
2 | 50 |
3 | 50 |
4 | 50 |
5 | 50 |
6 | 50 |
ここでは、フィクスチャ1がキュー1にのみ保存されていることが分かります(太字で強調表示、トラッキング値は通常表示)。キュー2を実行しても、トラッキングによってフィクスチャ1は50%のままです。
フィクスチャ1を60%でキュー3に保存してマージすると、下のようになります。
キュー番号 | フィクスチャ1 Dim |
---|---|
1 | 50 |
2 | 50 |
3 | 60 |
4 | 60 |
5 | 60 |
6 | 60 |
キュー3でフィクスチャの値が変更されたので、今度はキュー3から値がトラッキングされます。
保存の際の方法として Cue Only を選ぶこともできます。このオプションを用いて、フィクスチャ1を40%でキュー5に保存すると、キュー6が変化しないことが分かります。キュー6は、キュー5を保存する前と同じように見えます。
キュー番号 | フィクスチャ1 Dim |
---|---|
1 | 50 |
2 | 50 |
3 | 60 |
4 | 60 |
5 | 40 |
6 | 60 |
以前使われていなかったフィクスチャを追加すると、番号がゼロの隠しキューが自動的に作成され、そこにデフォルト値(フィクスチャに何も指示されていない場合の値)が設定されます。Cue Zeroは、キューリストに対する Settings of Executor ビュー で有効にできます。
このキューにはアクセスできませんが、コピーすれば、それが確かに見えるのを確認できます。
下の例を見てください。
キュー番号 | フィクスチャ1 Dim |
---|---|
1 | 0 |
2 | 50 |
3 | 50 |
4 | 50 |
5 | 50 |
6 | 50 |
ここには、キュー2で保存された値を持つフィクスチャ1があります。この値は、このキューからキュー6までトラッキングされています。キュー1を新しいキュー3.5に Cue Only を用いてコピーすると、新しいキューでそのフィクスチャは0%になりますが、キュー4では50%に戻ります。キュー4は変化しません。
キュー番号 | フィクスチャ1 Dim |
---|---|
1 | 0 |
2 | 50 |
3 | 50 |
3.5 | 0 |
4 | 50 |
5 | 50 |
6 | 50 |
Cue Zero を用いない場合は異なります。下はコピー前の状態です。
キュー番号 | フィクスチャ1 Dim |
---|---|
1 | |
2 | 50 |
3 | 50 |
4 | 50 |
5 | 50 |
6 | 50 |
キュー1をキュー3.5にコピーすると、それが空なので何もコピーされません。結果は下のようになります。
キュー番号 | フィクスチャ1 Dim |
---|---|
1 | |
2 | 50 |
3 | 50 |
3.5 | 50 |
4 | 50 |
5 | 50 |
6 | 50 |
コピーされたキューが空の場合、それを通して前の値がトラッキングされるだけで、他には何も行われません。
Cue Zero は、デフォルトではオフになっていますが、エクゼキュータ毎に変更できます。
dot2 では、トラッキング・シールドというものも使われています。これは、ディマー以外のすべてのアトリビュートに対する不要な変更から、キューを自動的に保護する仕組みです。
例をあげて説明しましょう。
下の表を見てください。
キュー番号 | フィクスチャ1 Dim |
フィクスチャ1 Position |
---|---|---|
1 | 100 | Singer |
2 | 0 | Singer |
3 | 0 | Singer |
4 | 0 | Singer |
5 | 0 | Singer |
6 | 100 | Singer |
フィクスチャ1を、ディマーが100%、Positon が Singer で、キュー1に保存しています。キュー2では、それをオフにします。
キュー6では、それが再びオンになりますが、Position にはまだ Singer が用いられています。これはトラッキングされた値です。キュー2〜6には、実際に値は保存されていません。
ここで同じフィクスチャを、Position を Drummer にしてキュー3で用いたいとします。
そこで、そのフィクスチャを100%にして Drummer を選び、キュー3に保存します。
この時点では下のようになります。
キュー番号 | フィクスチャ1 Dim |
フィクスチャ1 Position |
---|---|---|
1 | 100 | Singer |
2 | 0 | Singer |
3 | 100 | Drummer |
4 | 100 | Drummer |
5 | 100 | Drummer |
6 | 100 | Singer |
新しい Position 値の Drummer はキュー3に保存され、それがキュー6までトラッキングされます。ここでは、新たに Position を Singer にする必要があります。
また、キュー6のディマー値が保護されていないことにも注目してください。これは、キュー3からのトラッキング値です。
そこで、ディマーを0%にしてキュー4と5に保存します。これを Normal で保存すると、キュー6へとトラッキングされ、ディマーがオフになってしまいますので、Cue Only で保存(マージ)します。
最終的な結果は下のようになります。
キュー番号 | フィクスチャ1 Dim |
フィクスチャ1 Position |
---|---|---|
1 | 100 | Singer |
2 | 0 | Singer |
3 | 100 | Drummer |
4 | 0 | Drummer |
5 | 0 | Drummer |
6 | 100 | Singer |
トラッキングシールドの背後には、以下のような原則が働いています。
システムは、各フィクスチャ毎に、0から上昇するディマー値を探します。ディマー値に変化(0から上昇)がある場合、以前のキューに新しい値を作成する前にトラッキング値を保存することで、トラッキングによるキュー出力の変化を防ぎます。
キュー4と5の両方を Cue Only で保存しても、AutoUnblock という機能のために、キュー5のディマー値はトラッキング値になります。これは、キュー3の保存後、キュー6のディマーをトラッキング値にしたのと同じメカニズムです。AutoUnblock は、保存操作後に不要な保存値を自動的に取り除きます。